Bungo Stray Dogs: Mayoi Inu Kaikitan Wiki
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Part 1[]

龍頭抗争りゅうずこうそう開幕かいまくから、61日目の夜。

Oda Sakunosuke: ここか

その宝石店に入ると、私の靴裏くつうらでガラスの 破片はへんがパキッと砕けた。

ショウケースは残らず割られ、中の宝石 どころか、飾りの照明灯しょうめいとうごと盗まれていた。

Oda Sakunosuke: 犯人を見つけだせとわれても、 この惨状さんじょうではな……

そこはただの宝石店ではなかった。

強大きょうだい非合法組織ひごうほうそしき、《GSS》 ──ゲルハルト・セキユリテヰ・サアビスの 金庫だ。

彼等かれら資金洗浄しきんせんじょうねて、 ここに資金を保管していた。

今日の夜までは。

Oda Sakunosuke: さて……誰が一体どうやって、 あの凶悪きょうあく傭兵集団ようへいしゅうだんGSSが守る宝石屋を 襲ったんだ?

謎の声: そこにいるのは誰だい?

青年: おや。遅れて来た泥棒どろぼうかな? ここにはもう小銭こぜにひとつ残っていないよ

Oda Sakunosuke: 誰だ?何故ここにいる?

青年: のんびり屋の割に図太ずぶとい泥棒さんだ。 盗難事件のあった現場に、 現場検証げんばけんしょうの人間がいては駄目かい?

Oda Sakunosuke: 警察の人間か……

Oda Sakunosuke: 俺はある組織のしただ。 ここで起きた宝石強盗について調べに来た。 何か知らないか?

青年: 仕事は終わった。好きに調べればいい。 こちらも人手不足ひとでぶそくなので、 死体はそのままだがね

Oda Sakunosuke: 死体……?

青年: ああ。 ……見ても吐くなよ

Oda Sakunosuke: これは……

Oda Sakunosuke: 何だこれは? どうやればこんな殺しができる?

Oda Sakunosuke: 壁際で死んでいるのは、 界隈かいわいでは有名な殺し屋

Oda Sakunosuke: 廊下でちぎれているのは、 大戦たいせんで活躍したという熟練じゅくれん傭兵ようへい

Oda Sakunosuke: そして天井に引っかかっているのは、 GSSの武闘派ぶとうは幹部かんぶ

Oda Sakunosuke: 他にも知った顔がいくつも…… 全員、強力な戦闘系異能の持ち主だ

Oda Sakunosuke: おそらく彼らは宝石を守る番人ばんにんだろう。 そして強盗に殺された

Oda Sakunosuke: だが一体誰が、 これほど強力な異能者達を……

青年: そんなに驚くほどのことでもなかろう

Oda Sakunosuke: 何故だ?

青年: 今は大規模抗争だいきぼこうそう最中さいちゅう。 今この瞬間にも、外では人がばたばたと 死んでいる

青年: 異能者の死体なんて、 異能者そのものよりありふれていると思うが

Oda Sakunosuke: あんた、ヨコハマは初めてか?

青年: ああ。何故?

Oda Sakunosuke: この街を知っていれば、 この殺しが『ありえない』と判るからだ

Oda Sakunosuke: 彼らGSSは、今回の抗争には 絶対不干渉ふかんしょうつらぬいている

Oda Sakunosuke: 彼らの金庫を襲う奴は、 ねむれる獅子ししの口に頭を突っ込む間抜まぬけだ

青年: では、これは間抜けの犯行ということだね。 ……ふふ、面白い

Oda Sakunosuke: そうか…。 これは『奴』が殺したのか

青年: 『奴』?

Oda Sakunosuke: 数日前に突然現れた、一人の異能者の噂だ

Oda Sakunosuke: そいつは抗争をしている『すべての組織』を 攻撃するそうだ。見境みさかいなくな。 まさに狂戦士きょうせんしだ。呼び名は確か……

青年: 確か『白麒麟しろきりん』だな。その姿を見て、 生きているものはいないとか

青年: 目撃者が生きていないなら、 誰がどうやって名をつけたのだろうな?

Oda Sakunosuke: どんな奴なんだ。 やはり首が長いのだろうか

青年: うむ。……うむ?

青年: いや、そのキリンとは違うと思うが……

Oda Sakunosuke: そうか。間違えた

青年: 宝石強盗犯がその『白麒麟』だとすれば、 鑑識かんしきごときの出る幕ではなさそうだ。 失礼するよ

Oda Sakunosuke: 俺はもう少し調べる。白麒麟の正体は ともかく、その目的くらいは知りたい

青年: ……ああ、そうだ。助言じょげんをひとつ。 『白麒麟』が強盗をした目的は明白めいはく

青年: 退屈だったから、だよ。 美しい宝石を見れば、心が動くかと 思ったんだ

Oda Sakunosuke: ……

青年: 気が変わった。 君とはまた会いたくなったよ

青年: 生きていれば、また会おう

Dazai Osamu: 織田作。無事か?

Oda Sakunosuke: 太宰か。 ……こんなところで何をしてる?

Dazai Osamu: 監視報告かんしほうこくがあったんだ。今さっき、 長髪の男がこの店を出ていったろう?

Oda Sakunosuke: ああ。少し話した

Dazai Osamu: よく生きていられたね、織田作。 ……その男が『白麒麟』だ

Dazai Osamu: この抗争そのものを乗っ取ろうとしている 悪魔だよ

Oda Sakunosuke: ……

Oda Sakunosuke: ……やはりそうか

Part 2[]

『龍頭抗争』開幕から70日目──

謎の声: 太宰!何処だ太宰!

Nakahara Chuuya: おい太宰、いやがるんだろ? 出てこい!

Dazai Osamu: ふあぁ……うるさいなあ

Nakahara Chuuya: ここにいたか、太宰。 首領ボスから呼び出しがあったってのに、 何寝てやがる

Dazai Osamu: やァ中也か。おはよう。今日も君という 人間に大変適したサイズをしているねえ。 実に結構

Dazai Osamu: 私に何か話かい? いとも。今から顕微鏡けんびきょうを持ってくるから、 ちょっと待ってね

Nakahara Chuuya: 阿呆あほ!今外がどういう状況か判ってんのか? ポートマフィア史上……いや、 ヨコハマ史上最悪の大抗争だぞ!

Dazai Osamu: そんなに耳元で怒鳴どならなくても 判ってるって

Dazai Osamu: 四大組織よんだいそしきのうち、海外組織『ストレイン』は 構成員の八割が死亡

Dazai Osamu: 高瀬會たかせかい』は頭目とうもくが暗殺されて 指揮系統しきけいとう瓦解がかい

Dazai Osamu: その他の組織も、そろって死の行軍こうぐん中だ

Dazai Osamu: 武器商人の『陰刃いんじん』、 元宗教しゅうきょう組織の『聖天錫杖せいてんしゃくじょう』、 密輸業者あがりの『KK商会しょうかい』……

Dazai Osamu: にくしみと応報おうほう疑心暗鬼ぎしんあんきが作り出した、 血の狂騒曲きょうそうきょく

Dazai Osamu: ま、心配いらないよ。 ……全員死ねば自動的に終わる

Nakahara Chuuya: 本気でってんのか手前てめェ

Nakahara Chuuya: お前と違って、この街の誰も死にたくは ねえんだよ。寝てる暇があったら、 抗争を終わらせに外に行きやがれ

Dazai Osamu: ははは。そうって皆、せっせと抗争に 燃料をくべるのさ

Dazai Osamu: 抗争自体への対策は森さんに任せておけば 問題ない。私達が警戒けいかいすべきは、 むしろこっちだ。これを見なよ

Nakahara Chuuya: ? 何だ、この写真?

Nakahara Chuuya: 死体か……誰の死体だ?

Dazai Osamu: ポートマフィア現幹部、通称『大佐たいさ』だ

Nakahara Chuuya: な……!あのじいさん、死んだのか!? あり得ねえ!

Nakahara Chuuya: 地面を液状化えきじょうかさせてあやつる、あの爺さんの 異能に勝てる奴なんている訳ねえ! 誰がやった?

Dazai Osamu: 『白麒麟』だ

Dazai Osamu: 奴の異能は未だに不明だが……おそらく 『白麒麟』は、異能者を殺せば殺すほど 強くなる

Nakahara Chuuya: 何だと?

Nakahara Chuuya: なら……『白麒麟』にとって この抗争は、絶好ぜっこう猟場りょうば餌場えさばって事か

Nakahara Chuuya: どうすんだ、そんな奴

Dazai Osamu: やだなあ中也。感想が違うよ。 幹部候補の我々にとってはね

Dazai Osamu: 『これで幹部の席がひとつ空いた』…… だろ?

Dazai Osamu: ……いきなり殴るなんてひどいな

Nakahara Chuuya: 殺されなかっただけ感謝しろ

Dazai Osamu: 全く……痛いなあ。私だって人間なのだよ?

Nakahara Chuuya: 誰も信じねえよ。 ……『白麒麟』の野郎は俺が何とかする。 手前てめェはそこで死ぬまで寝てろ

Dazai Osamu: ふふ……酷いなあ……

Part 3[]

晴れない雨はない。けない夜もない。

……普通の人間は、そう思っている。

『龍頭抗争』の開幕から、72日目。

『白麒麟』は、昼の繁華街はんかがいを歩いていた。

抗争により破壊された街路がいろは、弾痕だんこん爆発痕ばくはつあとが目立つ。人通りも少ない。 だが、全くの皆無かいむというわけでもない。

つとにん主婦しゅふ学童がくどう達のまばらな往来おうらいが、 『白麒麟』の眼前がんぜんを通り過ぎていく。

白麒麟: まだこんなに人がいるのか。 ……もうしばらく楽しめそうだ

彼は噴水ふんすいのある広場を歩いた。

そして、一台の露天屋台ろてんやたいの前で 足を止めた。

白麒麟: じょうちゃん、この白く美しい花束を ひとつ

少女: え、あ……はい、えっと、 ありがとうございます

少女: 贈答ぞうとう用ですか?

白麒麟: そうだ。……これから会う人間は、 上等な人種じんしゅでね。冷たい地面に転がるのに、 献花けんかもなしでは可哀想かわいそう

少女: お優しいんですね

少女: それでは特別に、 これは当店からのサァビス品です

白麒麟:

少女は、隠し持っていた拳銃を白麒麟に つきつけた。

少女だけではない。往来を歩いていた 人々が、全員いっせいに白麒麟へと銃を 向ける。

謎の声: 楽しんで頂けたかな、『白麒麟』さん?

白麒麟: 君は……

Dazai Osamu: ちょっとした余興よきょうだよ。 とはえ、抵抗はおすすめしない。 マフィアの異能者が周囲を固めてる

白麒麟: この手際てぎわ……成程、君がポートマフィアの 幹部候補、太宰君か

Dazai Osamu: 寝てばかりだと、 相棒に愛想あいそかされそうでね。 ……一緒に来て貰おうか

白麒麟: もし断ったら?

Dazai Osamu: 別にどうも。 ……君も死に場所くらいは選びたかろう という私の気遣きづかいが、無駄むだになるだけだ

白麒麟: ふむ。それは悪いな

Dazai Osamu: 君はふたつ誤算ごさんをした。

Dazai Osamu: いくら異能が強かろうと、異能を無効化する 私という対抗手段アンチユニットには 無意味なこと

Dazai Osamu: もうひとつは、組織を軽視けいししたことだ

Dazai Osamu: 人間は個人より集団のほうが強い。 この世の絶対普遍ふへん真理しんりだよ、 個人軍ワンマンアーミー

白麒麟: 集団のほうが強い……か。 それが君が組織に所属する理由か?

Dazai Osamu: そうだ

白麒麟: それは悲劇ひげきだな。 自分でもそう思うだろう?

Dazai Osamu: ……

白麒麟: 確かに組織は重要だ。 一本の糸だけでは布はれない

白麒麟: だがね、白い糸玉いとだまに黒い糸が一本混じれば、 織られた布はみにくくて使い物にならなくなる

白麒麟: それもこの世の真理だ

Dazai Osamu: 私の心配をしてくれる訳だね? お心遣こころづかいには痛み入るが、 私は手加減てかげんする気はない

Dazai Osamu: 君は『大佐』を殺した。 幾らなんでもやりすぎだ

Dazai Osamu: あの人の死を黙って見過ごせるほど、 私は優しくはない

白麒麟: いいだろう

Part 4[]

Dazai Osamu: 君は『大佐』を殺した。 幾らなんでもやりすぎだ。

Dazai Osamu: あの人の死を黙って見過ごせるほど、 私は優しくはない

白麒麟: いいだろう。だが後悔こうかいするなよ

Dazai Osamu: 後悔?私が?

白麒麟: 君達が、だ。 この私を失えば、この抗争を 終わらせる機会は永久えいきゅうに失われるぞ

Dazai Osamu: はは。めずらしい意見だ

白麒麟: この抗争は、これ以上死体が 生産できなくなる限界まで続くだろう。 止める方法はひとつ

白麒麟: ……さらなる抗争だ

Dazai Osamu: 何?

白麒麟: 石油採掘場せきゆさいくつじょうの火災をどうやって 鎮火ちんかさせるか知っているかね?

白麒麟: 巨大な爆弾で、炎を吹き飛ばすのだよ

Dazai Osamu: 爆発音……?何処どこからだ!?

白麒麟: 今日をもって抗争は終結しゅうけつする。何故なら、 この瞬間からこれは抗争ではなく、 単一たんいつの戦争になるからだ

白麒麟: 私はつい先程、抗争に参加するすべての 非合法組織ひごうほうそしきに、宣戦布告せんせんふこくを通知した

Dazai Osamu: あれは……

Dazai Osamu: マフィアビルが…… 大きくなってきている……?

白麒麟: 手始てはじめに、すべての組織の拠点きょてんを爆破、 倒壊とうかいさせる

Dazai Osamu: いや、あれは……! まさか、こちらに倒れてきている……!?

白麒麟: 君の台詞せりふをそのまま返そう。 ”君はふたつ誤算をした”

白麒麟: ひとつは、この待ち伏せ自体を 読まれていたこと。 そして

白麒麟: 私が組織を持たない個人軍ワンマンアーミーだと 思ったことだ

通行人: ぐわあああ!

通行人: きゃああああ!

Dazai Osamu: な……!異能攻撃!?何処からだ!?

広場を包囲ほういするように、無数の異能攻撃が そそぐ。銃を持った通行人達が次々に 倒されていく。

白麒麟: 君は正しい。確かに組織の力はすさまじいよ

白麒麟: だから私も組織を#[編:あ}んでみたんだよ。 退屈をまぎらわす為にね

巨大な影が広場をおおう。 超高層ちょうこうそうのマフィアビルが、 頭上ずじょうから降り注ぐ。

Dazai Osamu: は、はは……『白麒麟』、これ程とは

白麒麟: その呼び名にも、少しきてきたな

Shibusawa Tatsuhiko: 私の名は澁澤龍彦しぶさわたつひこ。 抗争を終わらせる爆薬ばくやく。 死を終わらせるための死

Shibusawa Tatsuhiko: 最後の花火だ。 退屈な私を失望しつぼうさせてくれるなよ

Dazai Osamu: ははは……これはいいね。面白い。 そうか、君も……

Dazai Osamu: ならば、最大限の努力を約束しよう

ビルが広場に激突する。

その日、抗争に参加していたすべての 組織は、本拠地ほんきょちである建物を破壊された。

そして彼等は、しんの敵の名を知った。

翌日、倒壊したビルの瓦礫を救助班が 捜索そうさくしたが……太宰の姿は、 どこにもなかった。

Part 5[]

『龍頭抗争』開幕から87日目──

Shibusawa Tatsuhiko: ……

謎の声: 不機嫌そうですね

Shibusawa Tatsuhiko: ……君か

Fyodor D.: もはや貴方に敵はない。欲しいものは すべて手に入れた。何を不満がるのです?

Shibusawa Tatsuhiko: 欲しいもの? この部屋に飾ってあるものがか?

澁澤は室内を見回す。

そこには抗争で敵から奪った宝石、 金塊きんかい骨董美術こっとうびじゅつ、そして強力な 敵異能者の首が並べられている。

Shibusawa Tatsuhiko: この抗争で得た戦利品せんりひんを、蒐集癖しゅうしゅうへきおもむく ままに陳列してみた。だが、早くも 後悔しはじめているところだよ

Fyodor D.: 当然でしょう。 外界がいかいの物質では貴方の空白をめられない。 最初に忠告したはずです

Shibusawa Tatsuhiko: 戦闘や、宝石でさえも?

Fyodor D.: ええ。 古い知人ちじんであるぼくがうのですから、 間違いありません

Shibusawa Tatsuhiko: ああ……そうだな。 早く気付くべきだった

Shibusawa Tatsuhiko: 敵はほとんどほろんだ。 抵抗もあったが、それは頭の中の想定順序そうていじゅんじょを なぞるような展開だったよ

Shibusawa Tatsuhiko: 全く……

Shibusawa Tatsuhiko: ブリキの玩具おもちゃで楽しく遊んでいた子供が、 ある日ふと気付く

Shibusawa Tatsuhiko: 何故こんなモノで遊んでいたのだろう。 こんな陳腐ちんぷなもので……

Shibusawa Tatsuhiko: 昨日の自分は、こんな玩具に何の期待を? 子供は絶望的な気分になり、 力任ちからまかせに玩具を壊す

Shibusawa Tatsuhiko: そういう時の子供のような気分だよ

Fyodor D.: 貴方がそうあるということは、 神が世界をそう作ったということです

Shibusawa Tatsuhiko: なら私にどうしろとうんだ? 神を憎めとでも?

Fyodor D.: いいえ? もっと単純な解決法ですよ

Fyodor D.: 玩具を壊し、次に進むのです

Shibusawa Tatsuhiko: ……

Shibusawa Tatsuhiko: ああ……そうだな。そうしよう

Mori Ougai: まいったね……実にこのましからざる事態じたい

Nakahara Chuuya: ……

Hirotsu Ryuurou: ……

Mori Ougai: 通常の抗争なら、敵は多数の組織だ。 その行動は危険だが数式化すうしきかできる。 予測し、操ることも不可能ではない

Mori Ougai: だが『白麒麟』は違う。何もかもが謎だ。 異能も、目的も、その居場所さえも

Mori Ougai: きりかすみを相手に戦っているような気分だよ

Mori Ougai: マフィアを除く四大組織はほぼ壊滅。 我々にしても、幹部からじゅん幹部級の人間が 何人も行方不明ゆくえふめいになっている

Mori Ougai: 太宰君もその一人だ

Nakahara Chuuya: 太宰のポンツクはともかく、 他の仲間は助けなくては

Mori Ougai: 生きていれば、ね……

Mori Ougai: 広津さん。敵について、新たな情報は?

Hirotsu Ryuurou: はい。……末端まったんの噂でしかありませんが、 『白麒麟』の異能は奇怪きかいにして異端いたんだとか

Hirotsu Ryuurou: 何でも、戦った異能者は皆、 その異能のあまりの強大さに絶望し、 自ら命をつそうです

Mori Ougai: ……建物倒壊の時に行方不明になった 太宰君が、何か残した情報は?

Hirotsu Ryuurou: 行方不明になる前に太宰殿が残した 手掛かりはないか、三度調べました。 ですが新しい情報は何も…

Hirotsu Ryuurou: 何か新しい手掛かりを見つけたのか、 新品の顕微鏡をったようですが、 使われた形跡けいせきはありません

Nakahara Chuuya: 何?顕微鏡だと?

Nakahara Chuuya: そいつは何処にある!

Hirotsu Ryuurou: 太宰殿の部屋に……

Nakahara Chuuya: あのくそったれ!案内しろ!

Hirotsu Ryuurou: これですが……

Nakahara Chuuya: 貸せ!

Hirotsu Ryuurou: な……何も壊さずとも

Nakahara Chuuya: こいつを見ろ。中に隠されてた

Hirotsu Ryuurou: これは……!

Nakahara Chuuya: 発信器はっしんきを兼ねた#[通信装置:つうしんそうち}だ

Nakahara Chuuya: あの野郎は行方不明なんじゃねえ。 敵の攻撃を読んで、わざとつかまったんだ

Nakahara Chuuya: この発信器が示す先に、 太宰と『白麒麟』がいる

Hirotsu Ryuurou: 何と……

Nakahara Chuuya: 俺だけが気付くよう顕微鏡に仕込んだのは、 俺があの最低野郎を救出に行かざるを ない状況を作る為か

Nakahara Chuuya: クソ!相変わらず最悪の嫌がらせだ!

Hirotsu Ryuurou: どちらへ?

Nakahara Chuuya: バイクで出る

Hirotsu Ryuurou: ですが……『白麒麟』は、単身たんしんで 勝てる相手では

Nakahara Chuuya: いいや。『あれ』を使う

Hirotsu Ryuurou: まさか……あれを!?

Nakahara Chuuya: 待ってやがれ……クソ太宰!

<劇場版 DEAD APPLE>へつづく

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